誰でも分かる!バス運転手の労働時間(勤務時間)

バス運転手の労働環境改善のため、改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)が見直され、2024年4月から労働時間等がより厳しく規制されました。
これによってバス運転手の働き方は、どう変わったのでしょうか?労働時間について、できるだけわかりやすく紹介していきます。
なおこのコラムでご紹介するのは、改善基準告示のポイントの一部分のみです。各項目で特例などもありますので、より詳細に知りたい場合は厚生労働省による以下のサイトをご覧ください。
バス運転者の改善基準告示 | 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
バス運転手の労働時間(勤務時間)のルール・法律
- 拘束時間:1日13時間以内(上限15時間)
- 運転時間:2日平均1日あたり9時間以内(連続運転4時間以内)
- 休息時間:11時間以上(最低9時間以上)
- 残業時間:月45時間まで
拘束時間(労働時間+休憩時間)
バス運転手の1日の拘束時間は13時間以内。やむを得ず延長する場合でも上限15時間・週3回までが目安です。
なお拘束時間とは、始業から就業までの時間のことをいいます。運転時間に加え、休憩時間(仮眠時間)や車両点検、点呼、乗客を待つ時間、残業時間もすべて含めて13時間以内が原則です。

1年・1ヶ月の拘束時間
ちなみにもっと長期で拘束時間をみると、原則※として、以下いずれかに制限されています(①②どちらかを採用)。
- 1年3,300時間以内、1ヶ月281時間以内
- 52週間3,300時間以内、4週間を平均した1週間あたりの拘束時間65時間以内
※労使協定により、拘束時間の延長可能。
運転時間
2日を平均した、1日あたりの運転時間は9時間以内。労働時間だけじゃなく運転時間も、改善基準告示で制限されています。
1日9時間ではなく、2日平均という点が分かりづらいので、詳しくは以下の図をご確認ください。


連続運転時間
2日平均1日の運転時間は9時間ですが、9時間ぶっ続けで運転してよい、ということではありません。
連続運転時間は4時間以内。4時間に1回、30分以上の休憩を取る必要があります。なお休憩は1回10分以上であれば、分割して取ることも可能。貸切観光バスの場合は、おおむね2時間に1回のペースで休憩が取られています。
休息時間
休息時間は連続して11時間以上取るのが基本で、最低でも9時間以上とされています。
休息時間とは、勤務終了から次の勤務開始までの時間のことで、拘束時間中に取る「休憩時間」とは異なります。例えば8:00~21:00まで勤務した場合、次の日の始業時間が8:00なら、休息時間は11時間となります。

<特例>分割休息
原則、休息時間は9時間以上連続して取らなければいけませんが、特例として「分割休息」が認められています。
業務の都合上、9時間以上の休息を連続して取れない場合、2回に分けてもOKとするのが「分割休息」です。2回以上の分割は認められていません。
ただしこの場合、2回に分けた休息の合計が11時間以上、さらに1回の休息は4時間以上連続していなければいけません。また分割休息が常態化しないように、1ヶ月間の勤務回数の2分の1回まで、と決められています。

残業(時間外労働)・休日出勤
道路状況によってどうしても発生してしまう、バス運転手の残業。ただし労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)で、残業時間の上限がきちんと定められています。
- 法定労働時間:1日8時間、週40時間
- 残業時間(原則):月45時間、年360時間まで
- 残業時間(特別条項):年960時間まで
もちろん、改善基準告示で制限された拘束時間(1日最大15時間、1ヶ月最大281時間、1年最大3,300時間)を超える残業はしてはいけません。
また休日出勤もありえますが、2週に1回までと決められています。
バス運転手はシフト制?土日休み?

バス運転者の勤務形態は会社により異なりますが、「シフト制」もしくは「変形労働時間制」を採用している場合が多いです。いずれにしても、土日休みとは限りません。
シフト制
シフト制は以下のような勤務時間を、3勤1休などのスケジュールでぐるぐる回すイメージ。路線バスの運転手に多い働き方です。
- 朝番:早朝から昼まで(例 6:00~13:30)
- 遅番:昼から深夜まで(例 15:00~24:00)
- 通し:1日中(例 8:00~20:00)
- 中休:朝から夜までだが、途中に長めの休みが入る(例 6:00~22:00※中休11:00~15:00)
観光バスの運転手の場合、乗客のツアースケジュールに合わせた勤務になりますので時間は不規則です。土日勤務になる可能性も高いでしょう。
変形労働時間制
一方の変形労働時間制とは、労働時間を1日ではなく、週や月などの長い期間で計算する方法。
労働基準法によって、1日の労働時間は8時間、週40時間以内と定められています。ところが繁忙期など、法定労働時間を超えた勤務をしなければならない日も想定されます。
このように、労働力が必要な時と、そうでない時に合わせて労働時間を柔軟に割り振ることができるのが、変形労働時間制です。
例えば、忙しい時期は1日10時間、それ以外は6時間勤務にするなど、週平均が40時間以内であれば柔軟な働き方が認められる、といったイメージですね。
もちろん制度として認められた働き方ではありますが、一定期間は長時間勤務が続く可能性を考えると、体力的に厳しいと感じる人もいるでしょう。自身に合った勤務形態の会社を選ぶのも、ひとつの方法ですよ。
実際どうなの!?バス運転手の労働時間の現実

法律ではバス運転手の働き方があれこれ規制がされていますが、現場はどうなっているのでしょうか。
厚生労働省による統計「賃金構造基本統計調査」によると、バス運転手の労働時間は月197時間(時間外労働含む)。月8日休みとして単純計算すると、1日あたりの労働時間は約8.6時間となります。
あまり長時間勤務しているようには感じられないかもしれませんが、バス運転手の労働時間は産業全体よりも月に約20時間も長く、そのわりに給料も低いのが現実です。
- バス運転手:月197時間/月収32.5万円
- 産業全体:月178時間/月収34.6万円
運転業務以外にも、事務所での車両点検や点呼など、バス運転手の労働時間はそもそも長くなりがち。さらに運転手不足によって、1人あたりの時間外労働が増えてしまうことも、労働時間を引き上げるひとつの要因といえるでしょう。
働き方改革で人手不足に!?2024年問題について

バス運転手の働き方改革、心身の健康を守るために見直された改善基準告示ですが、これによって生じたのが、いわゆる「2024年問題」です。
2024年問題が叫ばれる以前からバス運転手は人材不足で、高齢化も進んでいました。そしてこの状態が解決されないまま、運転手1人あたりの労働時間が規制されたことで労働力不足はさらに加速。
これまで通りの運行をするためには、より多くの運転手を確保する必要がありますが、これが叶わず、路線バスの減便や廃止に踏み切るバス会社もあります。路線だけじゃなく貸切観光バスも人手不足のため、旅行会社からの運行依頼を引き受けることができないといった厳しい状況です。
このように業界全体としては大きな課題に直面していますが、ポジティブに考えると、バス運転手は超売り手市場。中小企業はもちろん、福利厚生等が充実した大手企業も十分に射程圏内。人材不足解消のため、好条件・好待遇の求人を出しているバス会社も多くありますよ。
各会社の求人内容では労働時間についての記述をよくチェックして、自分にあった働き方ができる企業を見つけてくださいね。