「バス運転手はやめとけ」は本当?バス会社100社の求人票を作ったライターが徹底解説!

バス運転手と検索すると「やめとけ」などマイナスな印象の検索結果も目にします。これらの検索結果を見るとバス運転手になりたいと思っている方は不安になるのではないでしょうか。
今回のコラムでは「バス運転手はやめとけ」と言われるのは本当なのか、バス会社100社の求人票を作成した筆者が解説していきます。
バス運転手はやめとけと言われる理由
「バス運転手はやめとけ」と言われる理由には以下の3つがよく挙げられます。
- 給料が低い
- 拘束時間(労働時間)が長い
- 顧客対応がストレスに感じる
以下では、3つの意見についての詳しく解説していきます。
バス運転手の給料は低い?他のドライバー職と比較してみた!

参照:令和6年度賃金構造基本統計調査
他のドライバー職と比較する前にバス運転手の給与をしっかり押さえておきましょう。
令和6年賃金構造基本調査によると、社員10名以上のバス会社におけるバス運転手の平均年収は461万1300円、月給は33万500円でした。バス運転手と言っても、路線バス、貸切バス、送迎バス、高速バスなど働き方はさまざま。会社の規模によっても給料は変わってきますので、あくまでも平均として考えてください。
では、同じドライバー職の中でバス運転手の給与は高いのか、それとも低いのでしょうか。データを元に比較してみましょう。
運転手の種類 | 年収 |
トラック運転手(大型) | 491万9,300円 |
バス運転手 | 461万1,300円 |
トラック運転手(大型を除く) | 437万700円 |
タクシー運転手 | 414万8,500円 |
乗用自動車運転手(会社役員付きの運転手など) | 334万2,900円 |
他のドライバー職と比べると、バス運転手の給与は2番目に高いことがわかりました。バス運転手の種類や勤務形態によって賃金は変わりますが、数字だけ見れば「バス運転手は給料が低い」とは言えません。
とはいえ、運送業というと「歩合給が多くて収入が不安定」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。実際、バス運転手の給与は安定しているのか、給与形態のデータを元に詳しく見ていきます。
固定給 | 固定給+歩合 | 歩合給 | |
バス | 52.5% | 43.0% | 4.5% |
トラック | 35.3% | 52.4% | 12.2% |
タクシー | 8.9% | 45.1% | 46.0% |
給与形態を見ると、バス運転手の給与形態は、「固定給」をベースに働いていることがわかります。「完全歩合制」の会社もありますが、4.5%とほとんどの企業が採用していませんでした。
トラックやタクシーは「完全歩合制」を採用している企業が多く、特にタクシー会社は約46.0%の企業が採用しています。「完全歩合制」の給与形態はガッツリ稼ぐことができる半面、収入が0になる可能性もあり安定して稼ぐことができません。
このように、同じドライバー職でも給与形態が大きく異なる原因は、業務内容の違いにあります。タクシー運転手は自身でお客様を探し、トラック運転手も運ぶ荷物の量などで売上が変動するため、個人の頑張りが売上に直結します。そのため、給与に成果が反映されやすい歩合制を採用している会社が多くなっています。
一方、バス運転手は決められたルートをダイヤに沿って運行するため、運転手個人の努力で売上を直接増やすことはできません。したがって、成果が給与に反映されやすい歩合制よりも、安定した固定給の割合が多くなっているのです。
固定給と歩合制、どちらがいいとは一概に言えませんが、バス運転手は安定して稼ぎたいという方におすすめの職業です。
「バス運転手の給料は低い」というイメージがあったかもしれませんが、バス運転手の給与はドライバー職の中で2番目の高さでした。加えて、ほとんどの会社が「固定給制」をベースにしており、他のドライバー職と比べて、安定して稼ぎやすい職業ということがわかりました。
バス運転手の給料についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてチェックしてくださいね。
バス運転手の年収徹底調査!地域・年代・性別で給料比較>>>>
「バス運転手=長時間労働」はもう古い!法改正で労働時間が短縮へ!
2014年 | 2019年 | 2024年 | |
月の所定労働時間 | 169時間 | 162時間 | 165時間 |
月の時間外労働 | 40時間 | 41時間 | 33時間 |
合計 | 209時間 | 203時間 | 198時間 |
※時間外労働時間:残業時間
参照:賃金構造基本統計調査
バス運転手は長時間労働をしている…。
というイメージを持たれている方もいるのではないでしょうか。厚生労働省が毎年出している賃金構造基本統計調査によると、2014年から2024年の10年間で、月11時間も勤務時間が減っていました。所定労働時間はその年の祝日等で変動が起きるので一概に比較できませんが、注目すべきは時間外労働が月7時間減少している点です。。
バス運転手を含む自動車運転業は、他の産業と比較して労働時間が長い傾向にあり、働き方の改善が大きな課題でした。この状況を改善するため、2024年国によって拘束時間の上限が引き下げられ、勤務後の休息時間をより長く確保する見直しが行われました。
次は改善基準告示がどのように変わったのか押さえておきましょう。
改善前(2024年3月31日まで) | 改善後(2024年4月1日以降) | |
一年間の拘束時間 | 3380時間 | 3300時間 |
一週あたりの拘束時間 | 【4周間平均(一週間あたり)】原則65時間(月換算281時間)最大71.5時間(月換算309時間) | 【一ヶ月】 原則:281時間最大:294時間 |
一日の休息時間 | 継続8時間 | 継続11時間が基本、最低9時間 |
※休息時間:退勤してから次の出勤までの時間
参照:バス運転者の改善基準告示 | 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
2024年4月から改正された改善基準告示。バス運転手だけでなく、ドライバー業全体で労働時間の上限の引き下げが行われました。今回はバス運転手の変更点を表にまとめています
特に注目すべきは、「休息時間」と「拘束時間」の大幅な見直しです。改善前と比較して、休息時間は「継続8時間以上」から「継続11時間以上を基本(最低9時間)」とするに変更され、3時間長くなりました。さらに「拘束時間」の上限は年で80時間も短縮されています。
しかも、最新の勤務時間のデータは改善前の期間(1月〜3月)も含んだ平均値です。つまり、ルール改訂後4月以降のデータだけで見れば、実際の勤務時間は発表されている数字以上に減っている可能性もあります。
「バス運転手は長時間労働」というイメージは、実際には改善され、勤務時間が減少していることがわかりました。
バス運転手の労働時間(勤務時間)についてはこちらに詳しく解説していますので合わせてチェックしてくださいね。
顧客対応がストレスに感じるのは本当?

バス運転手の仕事は、車両を運転するだけでなく、「接客業」としての一面も持ち合わせています。特に路線バスの運転手は、日々多くのお客様に対応する必要があります。
バス運転手に限らず、不特定多数の顧客と接する接客業では、顧客対応がストレスに繋がることも少なくありません。その一つの原因がカスタマーハラスメント(カスハラ)であり、これは今や社会問題となっています。では、労働者の中でどれくらいの割合の人がカスハラに遭っているかみていきましょう。
全日本交通運輸産業労働組合協議会が2021年に行った「悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査」によると、交通運輸・観光サービス業に従事している人の46.6%の人が利用者からの迷惑行為の被害に遭っています。交通運輸・観光サービス業の従事者がカスハラの被害を受ける割合は高いことがわかります。
職業別に見ると、特にタクシー、バス、鉄道が50%を超える結果になっています。この3つの職種が実際にどのようなカスハラを受けたのかみていきましょう。
- タクシー:「暴力行為」「土下座の強要」「金品の要求」
- バス:「SNS・インターネット上での誹謗・中傷」「土下座の強要」
- 鉄道:「暴力行為」「土下座の強要」「SNS・インターネット上での誹謗・中傷」
データを見るとタクシーと鉄道のカスハラは「暴力行為」が特徴です。特にタクシーは飲み会帰りのお客さんを乗せることがあるので、酔った客による暴行が多いと考えられます。バスはというと「SNS・インターネット上での誹謗・中傷」が特徴です。内容としては、動画や写真を撮ってSNSにあげるというものです。バスの運転席はドア等で区切られていないので、客側から撮影しやすいという面があります。バス運転手を含む、交通運輸・観光サービス業においてカスハラが特別多いということなのでしょうか?カスハラは、社会全体の問題であり、令和4年には「カスタマーハラスメント対策のマニュアル」が作成されました。バス業界においても、令和5年に道路運送法施行規則等の改正をし、名札の廃止など、運転手を守る仕組みづくりを行っています。
バス運転は運転をするだけでなく、接客業という一面も持ち合わせています。実際、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」にも、運転手に必要な能力の中で「顧客サービス・対人サービス」つまり接客スキルが必要だということがわかります。
一方で、SNSなどを見ると、今なお「バス運転手はカスハラがひどい仕事だ」といった声が目につくことも事実です。そうした声の中には、「バス運転手=接客業」という認識が薄いまま就職し、顧客対応が苦痛になってしまい、離職をした方が発信しているケースもあるかと思います。就職するにあたっては、バスの運転手は、接客業であるという認識は必要だと思います。
もちろん、データが示す通り、顧客対応が大変な側面はあります。しかし、接客業におけるカスハラは社会問題であり、社会全体の取り組みとして改善しようという動きが確実に進んでいます。インターネット上の一部の声の大きいトラフィックを増やす目的の意見を鵜呑みにするのではなく、冷静に考え、バス運転手になりたいと思ったら、ぜひ前向きに挑戦してください。
結論:「やめとけ」は過去の話。今こそバス運転手を目指そう!
- バス運転手はドライバー職の中で安定して収入を得られる
- 改善基準告示の見直しがされたことで、休息時間は長くなり、勤務時間も短くなった
- カスハラ対策も整備されており、運転手を守る取り組みが整えられている
「バス運転手はやめとけ」はもはや過去のものです。他のドライバー職よりも安定しており、法改正により労働時間も改善傾向にあります。また、カスハラ対策のマニュアル作りや名札の廃止など社会全体で運転手を守る仕組みが整えられています。
現在バス業界では、運転手不足が深刻な課題になっており、引く手あまたの状況です。バス運転手に興味があるという方は、ぜひ挑戦してください。