青空の下、すべての人を乗せて

〜ブルーハーツ『青空』が教えてくれる、バス運転手の誇り〜

 ブラウン管の向こう側
 カッコつけた騎兵隊が
 インディアンを撃ち倒した

ブルーハーツの名曲『青空』は、そんな歌詞から始まります。

近年、SNSでのアクセス数稼ぎの差別的な投稿が横行する中、改めて『青空』に込められた静かで鋭い言葉が刺さります。

今回、Netflixのドラマをみていたら、『青空』が流れてきたので、『青空』の世界観と、バス運転手の世界に思いを馳せてみました。

7月31日より配信が始まると、たちまちTOP10で1位になり、視聴数を伸ばしている注目のドラマシリーズ『グラスハート』*。ドラマで、主人公たちのロックバンドTENBLANKのアルバム「Glass Heart」は、Apple Musicのアルバムランキングでも1位に躍り出ました。

ドラマの中でバンドのメンバーたちが、ライブを終えて次の道へ向かおうとする重要なシーンで、『青空』(歌っているのは上白石萌音さん?)が流れます。

バスは、誰にでも開かれた空間

生まれた所や皮膚や目の色で
いったいこの僕の何がわかるというのだろう

外見や背景で人を判断することの愚かさを、問いかけます。

バス運転手の仕事も、根本はこの歌詞と同じ思想に立っています。

年齢も国籍も関係なく、乗車券やICカードさえあれば、誰もが同じ座席に腰を下ろすことができます。車内では、観光客も地元の高齢者も、通勤客も学生も、同じ乗客です。

ハンドルを握る運転手は、一人ひとりの背景を問うことはありません。

     目的地まで安全に運ぶ——それだけが使命です。
 

その姿勢は、『青空』のバスが「行き先ならどこでもいい」と語りかけるイメージに重なります。

『青空』と同じ景色を、すべての人に

歌に描かれた「青い空」は、世界中どこにいても見上げれば広がっている共通の景色です。
バスもまた、地域や季節を越えて、人々に同じ景色を見せる存在です。

通勤バスから見えるいつもの街並み、観光バスから見える桜並木、——それらは、車内の誰もが同じ窓から眺める景色です。

運転手は、その景色を安全に届ける案内人でもあります。

困難な時代にハンドルを握る

いま、全国でバス運転手の人手不足が深刻化しています。運転手の高齢化や若手不足、労働環境の課題に加え、地方では利用者減少から路線廃止が相次ぎ「地域の足」が失われつつあります。

それでもなお、路線や便を守るため、運転席に座る人たちがいます。
 

雪道も炎天下も、早朝から夜遅くまで、安全を第一に運び続ける——。

こうした日々の積み重ねは、まさに『青空』の歌詞が示す「歴史が僕を問いつめる」という感覚に通じます。 1便1便の運行が、地域の暮らしと誇りを支えているのです。

「そのバスに乗っけてくれないか」に応えるために

運転手さんそのバスに
僕も乗っけてくれないか

という呼びかけは、ただの移動ではなく、居場所や希望を求める声にも聞こえます。

買い物、通院、学校、職場、そのすべてをつなぐのがバスであり、運転手の仕事です。

地方の小さな停留所で待つお年寄りや、観光地を訪れる旅行者も、バスが移動を支えています。「どうぞ」と扉を開けるその瞬間が、人の生活を支え、笑顔を生むのです。

現役運転手の声

「お客さんを安全に目的地まで運ぶ、その緊張感がやりがいなんですよね。」(観光バス運転手Mさん:バス運転歴6年、トラックドライバーからの転職)

「バスからみえる、同じ景色*を大事にしています。」(*定時安全運行の意味
(路線バス運転手Aさん)

おわりに

ザ・ブルーハーツ『青空』が描く理想は、バス運転手の仕事に通じています。

背景や違いを超えて、誰もが同じように乗れる場所を守り、同じ青い空の下で景色を届ける。

人手不足や路線廃止という厳しい現実があっても、この仕事は社会の希望を乗せて走り続けます。

青い空は、今日もあなたのバスのフロントガラスの向こうに広がっています。

全国のバス運転手の皆さんにエールを送ります!


※歌詞はすべて、『青空』(作詞・作曲:真島昌利)を収録した、THE BLUE HEARTS 30th ANNIVERSARY ALL TIME MEMORIALS ~SUPER SELECTED SONGS~からの引用です

*Netflixドラマ「グラスハート」 https://www.netflix.com/jp/title/81517368